仕事の出張中に突然の激しい腹痛に襲われ、土地勘のない場所で救急病院を受診することになった時のことです。財布を確認すると、いつも入れているはずの健康保険証が見当たりませんでした。前日に荷物を整理した際に、自宅に置き忘れてきてしまったのです。痛みに耐えながら受付で「保険証を忘れました」と伝えると、スタッフの方から「本日は10割負担となりますが、よろしいですか?」と確認されました。背に腹は代えられない状況でしたが、頭の中では「一体いくら請求されるんだろう」という不安が渦巻いていました。診察では触診のほかにエコー検査と痛み止めの点滴、そして血液検査が行われました。約2時間の滞在を経て、会計窓口で提示された金額は2万8400円でした。普段なら8500円程度で済む内容が、保険証がないだけでこれほどの大金に化けるのかと驚愕しました。クレジットカードを持っていたので支払いは完了できましたが、もし現金のみの対応だったら立ち往生していたに違いありません。医師からは「急性胃腸炎」との診断を受け、数日分の薬も院外処方で受け取りましたが、薬局でも同様に10割分として4500円を支払いました。合計で3万円を超える出費です。自宅に戻った後、私はすぐに返金の手続きに取り掛かりました。受診したのが月末の28日だったため、月内に病院へ戻ることは物理的に不可能でした。そこで、自分が加入している健康保険組合のウェブサイトを調べ、「療養費支給申請書」という書類をダウンロードしました。病院で発行してもらった領収書の原本、診療明細書、そして保険証のコピーを添えて郵送しました。手続きは意外と煩雑で、印鑑の押し忘れや振込先口座の確認などで1回差し戻しもありましたが、申請から約2ヶ月後、ようやく私の口座に差額の7割分である2万3030円が振り込まれました。この体験から学んだ最大の教訓は、保険証は命の次に大切な携帯品であるということです。そして、もし忘れてしまったとしても、領収書と診療明細書さえしっかり保管しておけば、時間はかかってもお金は確実に戻ってくるということです。あの時の2万8000円という数字は、健康管理を疎かにしていた自分への高い授業料のように感じられましたが、日本の医療保障制度の有り難みを身をもって知る貴重な機会となりました。