30代の後半、立ち仕事がメインの職場に転職してからというもの、私の足は常に悲鳴を上げていました。最初は「単なる疲れだろう」と、市販の着圧ソックスを履いたり、お風呂上がりにマッサージをしたりして誤魔化していました。しかし、ある夏の暑い日、半ズボンを履こうとして鏡の前に立った私は、自分の右足のふくらはぎを見て絶句しました。そこには、蛇がのたうち回っているかのように、青紫色の血管がボコボコと浮き上がっていたのです。昨日までは気づかなかったのか、あるいは急激に悪化したのか、パニックになった私はすぐにスマートフォンで「足の血管、浮き出る、何科」と検索しました。そこで初めて下肢静脈瘤という病名を知り、心臓血管外科を受診することに決めたのです。予約した当日は、大きな病院の廊下を歩きながら「手術が必要だったらどうしよう」という不安でいっぱいでした。診察室で医師に足を見せると、すぐに「立位エコー検査」が行われました。モニターに映し出された私の血管は、重力に逆らって血液を心臓へ戻すための弁が壊れ、血液が下の方へ逆流して溜まってしまっている状態でした。医師は淡々と、しかし丁寧に、なぜ私の足の血管がこれほどまでに浮き出ているのかをロジックで説明してくれました。治療の選択肢として提示されたのは、弾性ストッキングによる保存療法と、最新のレーザーによる血管内焼灼術でした。私は根本から治したいと考え、日帰りのレーザー手術を選びました。手術と聞くと大がかりなものを想像していましたが、局所麻酔で行われ、痛みもほとんどなく、30分程度で終了したのには驚きました。手術後、あんなに私を苦しめていた足の重だるさは嘘のように消え去り、数ヶ月後にはボコボコしていた血管も平らになっていきました。この体験を通して痛感したのは、自分の体に起きた「見た目の異変」は、無視してはいけないという教訓です。もし私が「恥ずかしいから」と病院へ行くのを先延ばしにしていたら、今頃はさらに悪化して歩くことさえ苦痛になっていたかもしれません。血管外科という、普段は馴染みのない診療科に足を踏み入れるのは勇気がいりましたが、その一歩が私の生活の質を劇的に変えてくれました。今では毎日、自分の足を慈しむように観察し、少しでも異変があれば専門医に相談する習慣がつきました。健康な足で自由に歩けることの有り難さを、あの日、鏡の前で感じた絶望と、その後の快復の記録とともに一生忘れることはありません。
鏡を見て驚いた足の血管が浮き出る異変と血管外科での体験記録