多くの女性にとって、人生で最も足の血管の異変を自覚しやすい時期が妊娠期間です。妊娠すると、それまでは全く気にならなかった足の血管が急に浮き出たり、青紫色の網目模様が広がったりすることがあります。この時期に「何科に相談すべきか」と悩む妊婦さんは多いですが、まずは主診医である「産婦人科」に伝え、必要に応じて「血管外科」を紹介してもらうのが正しいステップです。妊娠中に血管が浮き出るのには、明確な3つの生理的理由があります。1つ目は、体内の血液量の急増です。赤ちゃんの成長を支えるために、母体の血液量は通常の1.5倍近くまで増え、血管はその拡張を強いられます。2つ目は、ホルモン、特にプロゲステロンの影響です。このホルモンは平滑筋を弛緩させる働きがあり、赤ちゃんが産道を通りやすくする一方で、血管の壁や弁をも緩めてしまい、逆流を誘発しやすくします。3つ目は、物理的な圧迫です。大きくなった子宮が骨盤内の太い静脈を圧迫し、足から戻ってくる血液の「帰り道」を塞いでしまうため、足の静脈に強い負荷がかかるのです。多くの場合、出産後数ヶ月以内に症状は和らぎますが、妊娠中にできた静脈瘤がそのまま定着してしまうケースも珍しくありません。妊娠中のケアとして不可欠なのは、やはり医療用の弾性ストッキングです。しかし、妊婦さん専用のサイズ選びや、着脱のしやすさ、お腹への負担を考慮する必要があるため、独断で購入する前に専門医のアドバイスを仰ぐべきです。また、重症化すると血栓症のリスクも高まるため、足の血管が単に浮き出ているだけでなく、赤く腫れて熱を持ったり、激しい痛みを伴ったりする場合は、一刻も早く血管外科での診察が必要です。最近の産婦人科クリニックでは、周産期の血管ケアを重視しており、血管外科医が定期的に往診に来る体制を整えている場所もあります。母子の安全を最優先にしつつ、自分自身の将来の美容と健康も守るために、妊娠中の足の異変を「仕方のないこと」で済ませない姿勢が大切です。出産という大仕事を終えた後に、軽やかな足取りで育児に向き合えるよう、妊娠中からの適切な情報収集と診療科との連携を心がけてください。
妊娠中に急増する足の血管の浮き出しと産婦人科・血管外科の連携