仕事を辞めてから次の職場に就くまでの「空白期間」に病気になった場合、医療費の扱いは非常にデリケートになります。30代男性のAさんの事例を詳しく見てみましょう。Aさんは前の会社を退職し、15日間の有給休暇を消化した後、新しい会社に入社する予定でした。しかし、その中間の5日目に高熱を出し、近所の内科を受診しました。この時、前の会社の健康保険はすでに資格喪失しており、新しい会社の保険証もまだ発行されていない「完全な無保険」のような状態でした。Aさんは窓口で全額自己負担として1万2000円を支払いました。この事例において重要なのは、Aさんが選択できる「精算のルート」が複数存在した点です。通常、退職後の保険には3つの選択肢があります。1、任意継続健康保険、2、国民健康保険への加入、3、家族の扶養に入る。Aさんの場合、最終的に国民健康保険へ加入することに決めましたが、市役所での手続きが受診から数日後になったため、受診当日は「保険証なし」として扱われたのです。しかし、国民健康保険の資格は「退職日の翌日」まで遡って有効になります。つまり、受診した日は書類上、すでに保険に加入していたことになります。Aさんは市役所で保険証を受け取った後、その足で病院の窓口へ向かいました。病院側は「受診日当日に資格があったこと」を確認できたため、窓口で7割分の8400円をその場で現金返金してくれました。このケースがスムーズに解決した理由は、Aさんが「受診した月内」に手続きを完了させたからです。もしこれが翌月になっていたら、病院での返金は受けられず、市役所に「療養費」としての還付申請をしなければなりませんでした。還付申請の場合、振込までに3ヶ月近くかかり、通帳のコピーや領収書の原本、詳細な明細書など多くの書類が必要になります。この事例から得られる教訓は、転職などの過渡期にある場合、保険証が手元になくても「どの保険に属することになるのか」を明確にしておくことが重要だという点です。たとえ手元にカードがなくても、資格さえ発生していればお金は戻ってきます。また、任意継続の手続き中であれば、健康保険組合から発行される「資格証明書」を代わりに使用できることもあります。転職活動中は忙しく、つい役所の手続きを後回しにしがちですが、医療費のリスクを考えると、1日でも早く手続きを済ませることが、万が一の際の10割負担という重圧を軽くするための最短の解決策となるのです。
転職期間中の保険証なし受診における費用と手続きの事例研究