高血圧や糖尿病は、今や日本の国民病とも言える生活習慣病ですが、これらの病気は、自覚症状がないままに進行し、心臓や脳だけでなく、「腎臓」にも深刻なダメージを与えてしまうことをご存知でしょうか。高血圧や糖尿病の治療を受けている方は、たとえ腎臓に自覚症状がなくても、定期的に「腎臓内科」を受診し、腎臓の状態をチェックすることが、将来の深刻な合併症を防ぐ上で極めて重要です。まず、「高血圧」が腎臓に与える影響です。腎臓は、無数の細い血管(糸球体)の塊であり、常に大量の血液が流れ込んでいます。血圧が高い状態が長く続くと、このデリケートな腎臓の血管に常に強い圧力がかかり、血管壁が硬く、厚くなってしまいます。これが「腎硬化症」です。血管が硬くなると、血液の流れが悪くなり、腎臓のフィルター機能が徐々に低下していきます。次に、「糖尿病」の影響です。血糖値が高い状態が続くと、血液中の過剰な糖が、腎臓の糸球体の血管壁を傷つけ、フィルターの網目を粗くしてしまいます。その結果、本来なら体内に留まるはずのアルブミンなどのタンパク質が、尿中に漏れ出てくるようになります。これが「糖尿病性腎症」の始まりです。初期段階では自覚症状は全くありませんが、放置すれば腎機能はどんどん低下し、最終的には、自分の腎臓では老廃物を排泄できなくなり、人工透析が必要な「末期腎不全」に至ってしまいます。現在、日本で新たに透析導入となる患者さんの原因疾患の第一位は、この糖尿病性腎症です。腎臓内科では、定期的な尿検査と血液検査を通じて、これらの腎臓のダメージを早期に発見します。尿中の微量なアルブミンを検出したり、腎機能の指標であるeGFRのわずかな低下を捉えたりすることで、自覚症状が現れるずっと前の段階から、介入を開始することができます。そして、より厳格な血圧管理や血糖コントロール、腎臓を保護する薬の投与、塩分制限などの食事療法を指導することで、腎機能の低下スピードを緩やかにし、透析導入を先延ばしにすることを目指します。高血圧や糖尿病の治療を受けている方は、主治医と相談の上、年に一度は腎臓内科の専門医の診察を受けることを強くお勧めします。
高血圧・糖尿病の人はなぜ腎臓内科の受診が必要なのか