ある日突然、トイレで便器が真っ赤に染まるほどの「血尿」が出たら、誰もが強い衝撃と恐怖を感じるでしょう。血尿は、体のどこかで出血が起きていることを示す、極めて重要なサインであり、決して放置してはならない症状です。しかし、いざ病院に行こうと思っても、「これは泌尿器科に行くべきか、それとも腎臓内科なのか」と迷ってしまうかもしれません。この二つの科のどちらを選ぶべきかは、血尿の「色」や「伴う症状」によって、ある程度の判断が可能です。まず、目で見て明らかに赤いと分かる「肉眼的血尿」が出た場合、多くは「泌尿器科」が専門となります。特に、排尿の始まりや終わりに痛みを伴う、頻繁にトイレに行きたくなる、残尿感がある、といった排尿に関する症状を伴う場合は、膀胱炎や尿道炎の可能性が高いです。また、わき腹や背中に激しい痛みを伴う場合は、尿路結石が尿管を傷つけている可能性が考えられます。痛みを伴わない、無症候性の肉眼的血尿は、膀胱がんや腎臓がんといった、より深刻な病気のサインである可能性もあるため、特に注意が必要です。これらの尿の通り道(尿路)や、そこに関連する臓器の疾患は、泌尿器科の専門領域です。一方、健康診断の尿検査で初めて指摘されるような、目には見えない「顕微鏡的血尿」や、尿の色がコーラのように濃い茶褐色に見える場合は、「腎臓内科」が専門となることが多いです。これは、腎臓のフィルターである「糸球体」で炎症が起こり、そこから赤血球が漏れ出している「糸球体腎炎」の可能性を示唆しています。糸球体腎炎では、血尿と同時に尿たんぱくが出たり、むくみや高血圧を伴ったりすることがあります。この場合は、腎臓そのものの内科的な病気であるため、腎臓内科での精密検査と治療が必要になります。ただし、これらの見分け方はあくまで一般的な目安です。例えば、腎臓がんでも肉眼的血尿は出ますし、糸球体腎炎でも真っ赤な血尿が出ることもあります。どちらを受診すべきか迷った場合は、まずは泌尿器科を受診するのが一つの方法です。泌尿器科でがんや結石などの異常が見つからなければ、腎臓内科的な疾患を疑い、紹介してくれることが多いためです。血尿は、体が発する緊急警報です。自己判断せず、速やかに専門医の診察を受けてください。