ただの風邪ではない大人のRSウイルス感染症
RSウイルスと聞くと、多くの人が「乳幼児が重い肺炎になる、冬に流行するウイルス」というイメージを持つかもしれません。確かに、RSウイルスは乳幼児、特に生後数ヶ月の赤ちゃんにとっては細気管支炎や肺炎を引き起こす非常に危険な病原体です。しかし、このウイルスは子供だけのものではありません。生涯にわたって何度も感染を繰り返し、大人も例外なく感染します。大人がRSウイルスに感染した場合、その多くは鼻水や喉の痛み、咳、微熱といった、ごく普通の風邪のような症状で済みます。そのため、本人は自分がRSウイルスに感染しているとは夢にも思わず、「ただの風邪が長引いているな」程度で済ませてしまうことがほとんどです。しかし、この「ただの風邪」という認識が、実は非常に厄介な問題を引き起こします。自覚がないまま出勤や外出を続けることで、知らず知らずのうちに周囲へウイルスをまき散らしてしまうのです。特に、抵抗力の弱い赤ちゃんや高齢者、基礎疾患を持つ人にうつしてしまった場合、相手を重症化させてしまう危険性があります。また、全ての成人が軽症で済むわけではありません。特に高齢者や、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といった呼吸器系の持病がある人、心臓に疾患がある人、あるいは免疫力が低下している人が感染すると、子供と同様に重い肺炎を引き起こし、入院が必要になるケースも少なくありません。しつこく続く咳や、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴がみられる場合は、単なる風邪と侮らず、RSウイルス感染症の可能性も考える必要があります。