風邪や喘息、あるいは百日咳といった激しい咳が長く続く疾患に見舞われた際、多くの人を悩ませるのが、胸や脇腹、いわゆる「あばら」の周辺に走る鋭い痛みです。最初は単なる筋肉痛だろうと軽く考えていても、咳をするたびに響くような激痛に変わり、深く息を吸うことさえ困難になると、一体自分の体の中で何が起きているのかという大きな不安に襲われます。このような状況で、まず私たちが直面するのは「何科を受診すべきか」という選択です。結論から述べれば、あばら周辺の痛みそのものを解決したいのであれば、第一選択は整形外科となります。整形外科は、骨、軟骨、筋肉、靭帯、そして末梢神経を専門とする診療科です。咳による負荷で生じるあばらの痛みには、大きく分けて「肋間筋の筋違い」と「肋骨の疲労骨折」の2種類があります。激しい咳は、胸郭を急激に収縮させ、時速300キロメートルにも及ぶと言われる呼気の勢いを生み出しますが、この際の衝撃はあばらにとって想像を絶する過酷なものです。整形外科では、レントゲン撮影や超音波エコー検査、場合によってはMRIを用いて、骨にひびが入っていないか、あるいは筋線維が損傷していないかを客観的に診断してくれます。もし、骨に異常が見つかれば、バストバンドと呼ばれる胸部固定帯を用いて患部を物理的に保護し、安静を保つための処置が行われます。しかし、ここで忘れてはならないのが、痛みの根本原因である「咳」そのものの治療です。いくら整形外科であばらの処置をしても、咳が止まらなければ再びあばらに衝撃が加わり、症状は一向に改善しません。したがって、激しい咳が現在進行形で続いている場合は、呼吸器内科や一般内科の受診も並行して行う必要があります。呼吸器内科では、咳の原因がウイルス性なのか、アレルギー性なのか、あるいは細菌感染によるものなのかを特定し、適切な咳止め薬や吸入ステロイド薬を処方してくれます。つまり、あばらが痛いという「結果」に対しては整形外科、咳が出るという「原因」に対しては内科系、という二段構えの受診が、完治への最短ルートとなるのです。特に高齢者や骨密度が低下している女性、あるいは慢性的な呼吸器疾患を抱えている方は、咳ひとつであばらの骨が簡単に折れてしまうことがあります。たかが咳による痛みと侮らず、自分の体の骨組みと呼吸器の状態を多角的にメンテナンスする姿勢を持つことが大切です。早期に適切な診断を受けることで、痛みの恐怖から解放され、安らかな呼吸を取り戻すことができるようになるのです。
咳のしすぎであばらが痛い時に行くべき診療科と痛みの正体