風邪が治りかけた頃に大人の体に現れる湿疹。その原因として、意外と知られていないのが、風邪を引き起こしたウイルスそのものが原因となる「ウイルス性発疹症」です。これは、特定の病名がつく麻疹(はしか)や風疹、水痘(みずぼうそう)とは異なり、一般的な風邪の原因となる様々なウイルスによって引き起こされる、非特異的な皮膚症状を指します。多くの人は、子供の頃に突発性発疹などを経験しますが、大人になってからも、体調やウイルスの種類によっては同様の反応が起こりうるのです。ウイルス性発疹が起こるメカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの説が考えられています。一つは、血液中に入ったウイルスが直接皮膚の血管に作用し、炎症反応を引き起こすというもの。もう一つは、ウイルスという異物に対して体内の免疫システムが戦った結果、その免疫反応の一環として皮膚に発疹が現れるという考え方です。風邪の治りかけというタイミングで出やすいのは、まさにこの免疫反応が活発になっている時期だからだと言えるでしょう。ウイルス性発疹の特徴は、その見た目や分布が非常に多様であることです。細かい赤い点々が全身に広がったり、少し盛り上がった不規則な形の紅斑が現れたり、あるいは麻疹のように融合する傾向を示すこともあります。かゆみは、全くない場合もあれば、軽度のかゆみを伴う場合もあります。通常、高熱などの全身症状が治まった後に現れ、数日から一週間程度で自然に消えていくのが一般的で、特別な治療を必要としないことがほとんどです。しかし、問題は、このウイルス性発疹と、治療が必要な「薬疹」や、他の重篤な皮膚疾患との見分けが、専門家でなければ非常に難しいという点です。特に、風邪薬を服用している場合は、どちらが原因なのかを自己判断することは不可能です。そのため、風邪の後に原因不明の湿疹が出た場合は、「どうせウイルス性発疹だろう」と高を括らず、一度は医師の診察を受け、他の危険な病気の可能性がないことを確認してもらうことが、安心のために何よりも重要です。