-
足の細い血管が透ける!蜘蛛の巣状静脈瘤は何科?
足の血管の悩みは、太い血管がボコボコと浮き出る下肢静脈瘤だけではありません。皮膚の表面に、赤や青紫色の細い血管が、まるで蜘蛛の巣や網目のように透けて見える症状に悩んでいる方も多くいます。これらはそれぞれ「蜘蛛の巣状静脈瘤」や「網目状静脈瘤」と呼ばれ、皮膚の直下にある非常に細い静脈や毛細血管が拡張してしまった状態です。直径は0.1ミリから1ミリ程度と非常に細く、ボコボコと膨らむことはありません。これらの静脈瘤は、下肢静脈瘤と同様に、長時間の立ち仕事や加齢、遺伝、女性ホルモンの影響などが原因と考えられていますが、多くの場合、血液の逆流を伴うような深刻な病的な状態ではなく、主に美容的な見た目が問題となります。痛みやだるさといった自覚症状はないことがほとんどですが、人によってはピリピリとした痛みや、ほてりを感じることもあります。では、この蜘蛛の巣状静脈瘤は、何科に相談すればよいのでしょうか。この場合も、まずは「血管外科」が適切な相談先となります。血管外科医は、エコー検査によって、太い静脈に逆流などの異常がないか、つまり本格的な下肢静脈瘤が隠れていないかを正確に診断してくれます。もし背景に下肢静脈瘤があれば、そちらの治療を優先する必要があります。美容的な改善を主目的とする場合は、「皮膚科」や「形成外科」、特に美容皮膚科や美容外科を標榜するクリニックが治療の選択肢となります。治療法としては、非常に細い針で薬剤を注入する「硬化療法」や、皮膚の上から特殊なレーザーを照射して血管を閉塞させる「レーザー治療」が一般的です。どちらの治療も外来で手軽に受けることができます。見た目の問題だと軽視せず、まずは専門医に相談し、自分の血管の状態を正しく把握することが解決への第一歩です。
-
しつこい鼻づまりは蓄膿症?何科で相談すべきか解説
「蓄膿症(ちくのうしょう)」という言葉を聞くと、なんだか古くて重い病気というイメージを持つ方もいるかもしれません。蓄膿症は、医学的には「慢性副鼻腔炎」と呼ばれ、急性の副鼻腔炎が治りきらずに長引き、炎症が3ヶ月以上続いている状態を指します。その名の通り、副鼻腔に膿が慢性的に溜まり続け、さまざまな不快な症状が日常生活に影響を及ぼします。その代表的な症状が、しつこい鼻づまりです。常にどちらかの鼻、あるいは両方の鼻がつまっていて口呼吸になりがちで、いびきの原因になったり、睡眠の質を低下させたりします。また、粘り気のある黄色や緑色の鼻水が頻繁に出る、鼻水が喉に流れる後鼻漏によって咳や痰がからむ、そして鼻の奥から嫌なにおいがするといった症状も特徴的です。急性期のような強い顔面痛は少ないものの、頭が常に重く感じる頭重感が続き、集中力が低下することも少なくありません。こうした慢性副鼻腔炎の症状に悩んでいる場合、相談すべき診療科は、急性の場合と同様に「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科では、内視鏡検査やCT検査によって、炎症の程度や範囲、そして「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれるポリープの有無などを詳細に確認します。慢性副鼻腔炎の治療は、急性期よりも時間がかかることが多く、根気強い通院が必要となります。治療の基本は、マクロライド系という種類の抗生物質を少量、長期間にわたって服用する方法です。これは細菌を殺す目的ではなく、薬の持つ抗炎症作用や粘膜の正常化作用を期待するものです。これに加えて、鼻うがいやネブライザー治療を継続的に行います。薬物療法で改善が見られない場合や、大きな鼻茸がある場合には、内視鏡を使った手術(内視鏡下鼻副鼻腔手術)が検討されます。近年、手術技術は大きく進歩しており、体への負担も少なく、多くの患者さんで症状の劇的な改善が期待できます。
-
私が副鼻腔炎で何科か迷い耳鼻科にたどり着いた話
今思えば、全ての始まりは子供からもらったただの風邪でした。最初は喉の痛みと少しの鼻水。市販の風邪薬を飲んで数日休めば治るだろうと、いつものように軽く考えていました。しかし、今回は様子が違いました。熱や喉の痛みは治まったのに、鼻の症状だけが一向に良くならないのです。それどころか、鼻水は日に日に黄色くネバネバしたものに変わり、鼻をかんでもかんでもスッキリしませんでした。そして、一番つらかったのが、顔面に現れた奇妙な痛みです。特に、かがんだり、階段を降りたりする振動で、両方の頬骨のあたりがズーンと重く響くような痛みを感じるようになりました。さすがにおかしいと思い、まずはいつもお世話になっているかかりつけの内科クリニックを受診しました。先生は「風邪をこじらせて長引いているね」と言い、抗生物質と鼻の炎症を抑える薬を処方してくれました。しかし、薬を5日間飲み続けても、症状はほとんど改善しませんでした。不安が募り、インターネットで「顔の痛み、黄色い鼻水」と検索して、初めて「副鼻腔炎」という病名を知りました。そして、多くのサイトで「専門は耳鼻咽喉科」と書かれているのを見て、ようやく自分がかかるべき科を間違えていたのかもしれないと気づいたのです。翌日、私は生まれて初めて耳鼻咽喉科の扉を叩きました。そこでは、レントゲン撮影と鼻の中をカメラで見る検査が行われ、医師から「典型的な急性の副鼻腔炎ですね。頬の奥に膿がびっしり溜まっていますよ」と告げられました。診断が確定した安堵感と同時に、もっと早く専門医に来ればよかったという後悔がこみ上げてきました。内科の先生を責めるつもりは全くありません。ただ、鼻や喉の症状が主役の場合は、やはりその道の専門家に診てもらうことがいかに重要かを身をもって痛感した出来事でした。
-
血尿が出た!赤い尿は泌尿器科?腎臓内科?
ある日突然、トイレで便器が真っ赤に染まるほどの「血尿」が出たら、誰もが強い衝撃と恐怖を感じるでしょう。血尿は、体のどこかで出血が起きていることを示す、極めて重要なサインであり、決して放置してはならない症状です。しかし、いざ病院に行こうと思っても、「これは泌尿器科に行くべきか、それとも腎臓内科なのか」と迷ってしまうかもしれません。この二つの科のどちらを選ぶべきかは、血尿の「色」や「伴う症状」によって、ある程度の判断が可能です。まず、目で見て明らかに赤いと分かる「肉眼的血尿」が出た場合、多くは「泌尿器科」が専門となります。特に、排尿の始まりや終わりに痛みを伴う、頻繁にトイレに行きたくなる、残尿感がある、といった排尿に関する症状を伴う場合は、膀胱炎や尿道炎の可能性が高いです。また、わき腹や背中に激しい痛みを伴う場合は、尿路結石が尿管を傷つけている可能性が考えられます。痛みを伴わない、無症候性の肉眼的血尿は、膀胱がんや腎臓がんといった、より深刻な病気のサインである可能性もあるため、特に注意が必要です。これらの尿の通り道(尿路)や、そこに関連する臓器の疾患は、泌尿器科の専門領域です。一方、健康診断の尿検査で初めて指摘されるような、目には見えない「顕微鏡的血尿」や、尿の色がコーラのように濃い茶褐色に見える場合は、「腎臓内科」が専門となることが多いです。これは、腎臓のフィルターである「糸球体」で炎症が起こり、そこから赤血球が漏れ出している「糸球体腎炎」の可能性を示唆しています。糸球体腎炎では、血尿と同時に尿たんぱくが出たり、むくみや高血圧を伴ったりすることがあります。この場合は、腎臓そのものの内科的な病気であるため、腎臓内科での精密検査と治療が必要になります。ただし、これらの見分け方はあくまで一般的な目安です。例えば、腎臓がんでも肉眼的血尿は出ますし、糸球体腎炎でも真っ赤な血尿が出ることもあります。どちらを受診すべきか迷った場合は、まずは泌尿器科を受診するのが一つの方法です。泌尿器科でがんや結石などの異常が見つからなければ、腎臓内科的な疾患を疑い、紹介してくれることが多いためです。血尿は、体が発する緊急警報です。自己判断せず、速やかに専門医の診察を受けてください。
-
科学的に見るストレスとまぶたの炎症
ストレスがものもらいの原因になる、という話は、単なる経験則や迷信ではありません。そこには、心と体が密接に連携する「心身相関」のメカニズムが深く関わっています。ストレス、特に慢性的で長期にわたるストレスは、私たちの体内で様々な化学的変化を引き起こし、免疫という精密な防御システムに大きな影響を与えます。その中心的な役割を担うのが、「コルチゾール」という副腎皮質から分泌されるホルモンです。コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、体がストレスに対応するために分泌されます。短期的には血糖値を上げたり、抗炎症作用を発揮したりと、体を守る働きをします。しかし、ストレスが長期間続くと、コルチゾールが過剰に分泌され続ける状態に陥ります。この状態が、免疫システムにとってはマイナスに作用するのです。過剰なコルチゾールは、ウイルスや細菌と戦うリンパ球などの免疫細胞の働きを抑制してしまいます。これにより、体全体の抵抗力が低下し、普段は問題にならないような皮膚の常在菌(黄色ブドウ球菌など)に対しても無防備な状態になり、細菌感染による「麦粒腫」が発症しやすくなります。さらに、ストレスは自律神経のバランスも乱します。交感神経が優位な緊張状態が続くと、血管が収縮して血行が悪化します。まぶたにあるマイボーム腺は、目の表面を保護する油分を分泌する重要な器官ですが、血行不良やホルモンバランスの乱れは、この油分の性質を変化させ、粘度を高くしてしまうことがあります。その結果、分泌腺の出口が詰まりやすくなり、脂が溜まってしこりを形成する「霰粒腫」の引き金となるのです。まぶたは皮膚が非常に薄く、外部からの刺激にさらされやすいデリケートな部位です。そのため、全身の免疫力が低下した際に、その影響が真っ先に現れやすい場所の一つと言えます。まぶたの腫れや痛みは、局所的なトラブルであると同時に、私たちの心身が発するストレス過多のシグナルでもあるのです。
-
私がマイコプラズマ肺炎で苦しんだ二週間
あれは、肌寒い秋の日のことでした。最初は、軽い喉の痛みと体のだるさから始まりました。いつもの風邪だろうと高をくくり、市販の総合感冒薬を飲んで早めに床につきました。しかし、翌朝になっても体調は一向に良くなりません。それどころか、乾いた咳が出始め、熱も三十八度を超えていました。近所の内科を受診し、風邪と気管支炎だろうということで、抗生物質と咳止めを処方されました。これで良くなるはずだ。そう信じて薬を飲み続けましたが、私の期待は無惨に裏切られました。熱は上がったり下がったりを繰り返すだけで、咳は日に日に悪化の一途をたどったのです。それは、ただの咳ではありませんでした。一度出始めると、息もできないほど激しく咳き込み、まるで肺が飛び出してしまいそうなほどの衝撃が体を襲います。特に夜は地獄でした。横になると咳がひどくなるため、壁に寄りかかって座ったまま、浅い眠りを繰り返すしかありません。体力はみるみるうちに奪われ、食欲もなくなり、一週間で体重は四キロも落ちていました。処方された薬が切れる頃、私は藁にもすがる思いで、呼吸器専門のクリニックの扉を叩きました。これまでの経緯を話すと、医師は私の顔を見て静かに言いました。「マイコプラズマ肺炎が強く疑われますね。前の病院でもらった抗生物質は、この病気には効かない種類です」。そして、マイコプラズマに有効とされる別の種類の抗生物質を処方してくれました。半信半疑でその日の夜から薬を飲み始めると、翌日、驚くべき変化が起きました。あれだけ私を苦しめていた激しい咳の発作が、明らかに軽くなっていたのです。三日も経つ頃には、夜も横になって眠れるようになり、一週間後には、日常生活に支障がないレベルまで回復しました。あの二週間の苦しみは、今思い出しても身震いがします。正しい診断と、適切な薬がいかに重要か。この経験を通じて、私はそれを骨の髄まで思い知らされました。
-
ただの風邪ではない大人のRSウイルス感染症
RSウイルスと聞くと、多くの人が「乳幼児が重い肺炎になる、冬に流行するウイルス」というイメージを持つかもしれません。確かに、RSウイルスは乳幼児、特に生後数ヶ月の赤ちゃんにとっては細気管支炎や肺炎を引き起こす非常に危険な病原体です。しかし、このウイルスは子供だけのものではありません。生涯にわたって何度も感染を繰り返し、大人も例外なく感染します。大人がRSウイルスに感染した場合、その多くは鼻水や喉の痛み、咳、微熱といった、ごく普通の風邪のような症状で済みます。そのため、本人は自分がRSウイルスに感染しているとは夢にも思わず、「ただの風邪が長引いているな」程度で済ませてしまうことがほとんどです。しかし、この「ただの風邪」という認識が、実は非常に厄介な問題を引き起こします。自覚がないまま出勤や外出を続けることで、知らず知らずのうちに周囲へウイルスをまき散らしてしまうのです。特に、抵抗力の弱い赤ちゃんや高齢者、基礎疾患を持つ人にうつしてしまった場合、相手を重症化させてしまう危険性があります。また、全ての成人が軽症で済むわけではありません。特に高齢者や、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といった呼吸器系の持病がある人、心臓に疾患がある人、あるいは免疫力が低下している人が感染すると、子供と同様に重い肺炎を引き起こし、入院が必要になるケースも少なくありません。しつこく続く咳や、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴がみられる場合は、単なる風邪と侮らず、RSウイルス感染症の可能性も考える必要があります。
-
子供の頻尿、どれくらいから心配すべきか
子どもが急に「おしっこが近い」と言い始め30分や1時間おきに何度もトイレに行くようになると、親としては「何か病気なのではないか」と心配になるものです。子どもの頻尿は大人とは異なり、その原因の多くが一時的なものであったり心理的な要因であったりすることが多いという特徴があります。子どもの正常な排尿回数の目安は年齢によって異なります。幼児期(1~3歳)では1日に10回前後、学童期(6歳以降)になると大人と同じ5~7回程度に落ち着いてきます。この目安から著しく回数が増え1日に15回や20回にもなるようであれば頻尿を考えます。子どもの頻尿でまず確認すべきは排尿時に「痛み」を伴っていないかそして「尿の量」です。もし排尿時に痛みを訴えたり残尿感があったり尿が濁っていたりするようであれば「尿路感染症(膀胱炎など)」の可能性があります。この場合は細菌感染が原因であり抗生物質による治療が必要なため速やかに「小児科」を受診する必要があります。また頻尿と共に「異常に喉が渇き大量の水を飲む(多飲)」といった症状が見られる場合は「糖尿病」の可能性も考えなければなりません。一方で痛みや多飲といった症状がなくトイレに行っても毎回少量しか尿が出ないという場合は「心因性頻尿」の可能性が高いと考えられます。これは主に4~6歳くらいの感受性の高い子どもに見られ精神的なストレスや不安が引き金となります。例えば弟や妹が生まれて親の関心がそちらに向いてしまうことへの寂しさや、幼稚園や学校での新しい環境への緊張、友人関係の悩みなどが原因となることがあります。トイレに行くことで親の注意を引こうとしたり不安な気持ちを紛らわしたりしているのです。この場合は原因となっているストレスや不安を取り除いてあげることが最も重要です。頭ごなしに叱るのではなく子どもの話を優しく聞いてあげ安心感を与えてあげましょう。ほとんどは数週間から数ヶ月で自然に治まっていきます。ただし症状が長引く場合や鑑別が難しい場合は一度かかりつけの小児科に相談するのが最も安心です。
-
大人の手足口病の症状と経過を詳しく解説
大人が手足口病に感染した場合、その症状は子供のそれとは比較にならないほど重症化する傾向があり、典型的な経過をたどることが多いです。まず、ウイルスに感染してから三日から五日の潜伏期間を経て、突然の悪寒と共に三十八度から四十度近い高熱で発症します。インフルエンザと見紛うほどの強い倦怠感や関節痛、頭痛を伴うことも珍しくありません。発熱から一日か二日後、この病気の最もつらい症状である喉の激痛が現れ始めます。鏡で見ると、喉の奥や扁桃腺の周り、舌の付け根などに、白い膜を張ったような痛々しい口内炎(水疱)が複数、あるいは無数にできているのが確認できます。この口内炎による痛みは激烈で、食事はもちろん、水分を摂ることさえ困難を極めます。唾液を飲み込む動作ですら激痛が走るため、会話もおろそかになりがちです。そして、喉の痛みがピークを迎える頃とほぼ同時に、手足に特徴的な発疹が出現します。手のひら、指の間、足の裏、足の指などに、少し盛り上がった赤い発疹や水疱が広がります。子供の場合はかゆみを伴う程度ですが、大人の場合はジンジン、チクチクとした神経を刺激するような強い痛みを伴うのが大きな特徴です。特に足の裏に発疹が集中すると、体重をかけることができず、歩行が著しく困難になります。また、発疹は手足だけでなく、お尻や膝、肘といった体の広範囲に及ぶこともあります。これらの高熱、喉の痛み、手足の痛みを伴う発疹といった一連の症状は、発症から三日から七日ほどでピークを迎え、その後は徐々に快方に向かいます。しかし、痛みが完全に引き、普段通りの生活に戻れるまでには十日以上を要することも多く、その間の心身への負担は計り知れません。
-
心と体の防衛ラインとまぶたの炎症
私たちの体は、外部からの脅威に対して常に「防衛ライン」を張っています。その最前線で戦うのが免疫システムです。しかし、この強力な防衛ラインは、目に見えない「ストレス」という内部からの攻撃によって、いとも簡単に揺らいでしまうことがあります。まぶたにできる「ものもらい」は、この防衛ラインのほころびを可視化する、局所的な炎症反応の一つと捉えることができます。この現象を理解するためには、「心身相関」という観点から、ストレスが免疫系に与える影響を見ていく必要があります。私たちが慢性的なストレスにさらされると、脳の視床下部、下垂体、そして副腎を結ぶ「HPA軸」と呼ばれる神経内分泌系が過剰に活動します。これにより、ストレスホルモンであるコルチゾールが持続的に分泌され、免疫細胞の活動にブレーキをかけてしまいます。これが、ストレスを感じると風邪をひきやすくなったり、ものもらいができやすくなったりする大きな理由です。さらに、ストレスは自律神経のバランスを崩し、交感神経を優位にさせます。この状態は、血管を収縮させ、全身の血行を悪化させます。まぶたには、目の潤いを保つための脂を分泌する「マイボーム腺」が多数存在しますが、この腺は非常にデリケートで、血行不良やホルモンバランスの乱れの影響を受けやすいのです。血行が悪くなると、分泌される脂の質が変化し、固まりやすくなります。その結果、腺の出口が詰まり、炎症を起こして霰粒腫を発症するリスクが高まります。また、マイボーム腺の機能不全はドライアイの原因にもなり、目の表面のバリア機能を低下させます。バリア機能が低下した目に、免疫力が落ちた状態で細菌が侵入すれば、麦粒腫が発症するのは当然の帰結と言えるでしょう。このように、ものもらいの発症は、単に「まぶた」という一箇所で起きている問題ではありません。それは、ストレスという全身的な負荷が、免疫システムや自律神経系、内分泌系といった複雑なネットワークを介して、たまたま体の弱い部分、デリケートな部分である「まぶた」に症状として現れた結果なのです。まぶたの炎症は、私たちの心と体の防衛ラインが助けを求めている証しに他なりません。