マイコプラズマ肺炎は、その感染力の強さと潜伏期間の長さから、気づかないうちに家庭や職場、学校といった集団内で感染を広げてしまうリスクが高い疾患です。自分自身と周囲の人々を感染から守るためには、日頃からの予防意識と、感染が疑われる際の適切な行動が不可欠となります。予防の基本は、あらゆる感染症対策と同様に「手洗い」と「咳エチケット」の徹底です。外出先から帰宅した際、食事の前、トイレの後などには、石鹸と流水で指の間や手首まで丁寧に洗いましょう。すぐに手が洗えない状況では、アルコールベースの手指消毒剤が有効です。また、感染の流行期や人混みではマスクを着用することが、飛沫の吸い込みを防ぐ上で効果的です。咳やくしゃみが出る場合は、周囲への飛散を防ぐため、マスクは必須と考えましょう。マスクがない緊急時には、ティッシュやハンカチ、あるいは腕の内側で口と鼻をしっかりと覆うことがマナーであり、感染拡大防止に繋がります。もし家庭内に感染者が出てしまった場合は、さらなる対策が必要です。可能であれば、感染者は個室で休み、他の家族との接触を最小限に抑えます。看病は特定の人が担当し、部屋に入る際は必ずマスクを着用し、出た後には入念な手洗いを行いましょう。感染者が使用したタオルや寝具、食器類は、家族と共用しないようにします。食器は通常の食器用洗剤で、リネン類は洗濯機で洗えば十分ですが、分けて洗うとより安心です。ドアノブ、テーブル、電気のスイッチ、リモコンなど、皆が頻繁に触れる場所は、市販のアルコール除菌スプレーや次亜塩素酸ナトリウム溶液(家庭用漂白剤を薄めたもの)でこまめに拭き掃除をすると、接触感染のリスクを減らすことができます。そして、室内の空気が滞らないよう、一日に数回、窓を開けて十分な換気を行うことも忘れてはなりません。職場や学校においても、体調不良を感じたら無理して出勤・登校せず、自宅で休養し、必要であれば医療機関を受診するというルールを組織全体で共有することが、集団感染を防ぐ上で最も重要です。一人ひとりの小さな心がけが、大きな感染の波を防ぐための防波堤となるのです。