セルフケアを続けてもかかとの痛みが一向に改善しない、あるいは日常生活に支障が出るほどの激しい痛みが続く場合、それは医療機関の助けを借りるべきサインです。長引く痛みは、単なる足底腱膜炎ではなく、他の疾患が隠れている可能性も否定できません。例えば、レントゲン検査で「踵骨棘(しょうこつきょく)」と呼ばれるかかとの骨のトゲが見つかることがあります。この骨棘自体が直接痛みの原因となることは稀ですが、足底腱膜に長期間ストレスがかかり続けている証拠とは言えます。また、疲労骨折や、まれに関節リウマチなどの全身性の疾患、神経の障害が痛みの原因である可能性も考慮する必要があります。整形外科を受診すると、まずは問診や触診、レントゲン検査が行われ、必要に応じて超音波(エコー)検査やMRI検査で炎症の程度や腱の状態をより詳しく評価します。治療法としては、保存療法が基本となります。一般的なセルフケアに加えて、専門家の指導のもとで行う理学療法が中心となります。理学療法士は、個々の患者の身体の状態を評価し、より効果的なストレッチや筋力トレーニングの指導、歩行パターンの修正などを行います。痛みのコントロールのためには、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の飲み薬や湿布薬が処方されることもあります。これらで改善が見られない難治性の場合には、より進んだ治療法が検討されます。患部に直接ステロイドを注射する方法は、強力な抗炎症作用で短期的に痛みを抑える効果が期待できますが、腱を脆くするリスクもあるため慎重な判断が必要です。近年注目されているのが「体外衝撃波治療」です。これは、患部に高エネルギーの圧力波を照射することで、痛みを伝える神経の働きを鈍らせ、組織の修復を促す治療法です。また、患者自身の血液から成長因子を豊富に含む成分を抽出し、患部に注射するPRP療法なども選択肢の一つです。手術が必要となるケースは非常に稀ですが、保存療法を半年以上続けても全く効果がなく、生活に大きな支障が出ている場合には、最終的な手段として検討されることがあります。諦めずに専門家と相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。