まぶたが赤く腫れて、瞬きをするたびにゴロゴロとした違和感や痛みがある。多くの人が一度は経験したことのある「ものもらい」ですが、その原因を単なる細菌感染だと考えてはいないでしょうか。もちろん、直接的な原因はまぶたにある分泌腺への細菌感染や詰まりです。しかし、なぜか仕事が忙しい時期や、大きな悩みを抱えている時に限って、ものもらいができてしまう。そう感じたことがあるなら、それは気のせいではありません。ストレスは、ものもらいの発症における重要な「間接的な原因」となり得るのです。ものもらいには、主に二つの種類があります。一つは、まつげの根元にある汗腺や皮脂腺に細菌が感染して起こる「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」。まぶたが赤く腫れ、ズキズキとした痛みを伴うのが特徴です。もう一つは、まぶたの内側にあるマイボーム腺という脂の分泌腺が詰まって、しこりのようなものができる「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」です。こちらは通常、痛みはあまりありません。これらの発症の背景には、私たちの体の防御システムである「免疫力」が深く関わっています。健康な状態であれば、皮膚の常在菌であるブドウ球菌などが多少付着しても、免疫機能が働いて感染を防いでくれます。しかし、私たちは精神的なストレスや過労、睡眠不足といった負荷がかかると、自律神経のバランスが乱れ、免疫機能が低下してしまいます。ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールの過剰な分泌が、免疫細胞の働きを抑制してしまうのです。免疫力が低下した状態では、普段なら何でもないはずの細菌が簡単に感染を起こし、麦粒腫を引き起こします。また、自律神経の乱れはホルモンバランスにも影響を与え、マイボーム腺からの脂の分泌が過剰になったり、粘度が高まったりして腺が詰まりやすくなり、霰粒腫の原因となるのです。つまり、ストレスは、ものもらいという火事が起きやすいように、乾燥した燃えやすい土壌を作り上げてしまうようなもの。まぶたの不調は、体が発する「心と体の休息が必要だ」というSOSサインなのかもしれません。