かかとに痛みを感じ始めたら、それは体からの危険信号です。放置すれば症状は悪化の一途をたどる可能性があり、早めのセルフケアがその後の回復を大きく左右します。まず最も重要かつ基本的な対処法は、患部を休ませること、つまり「安静」です。ランニングやジャンプの多いスポーツ、長時間の立ち仕事など、かかとに負担をかけている心当たりのある活動は、痛みが引くまで一時的に中断するか、頻度や強度を大幅に減らす勇気を持ちましょう。その上で、日々の生活に積極的に取り入れたいのがストレッチです。特に重要なのが、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)とアキレス腱の柔軟性を高めることです。これらの部位が硬くなっていると、歩行時に足首の動きが制限され、その代償として足底腱膜が過剰に引っ張られてしまうため、炎症の直接的な原因となります。壁に両手をつき、痛い方の足を後ろに引いてかかとを床につけたまま、前の膝をゆっくり曲げてアキレス腱からふくらはぎにかけて心地よく伸びるのを感じるストレッチは非常に効果的です。また、椅子に座って足の下に置いたタオルを指でたぐり寄せる「タオルギャザー」という運動は、足裏の筋肉(内在筋)を鍛え、土踏まずのアーチを支える機能を高めるのに役立ちます。運動後や一日の終わりなど、熱感や強い痛みがある場合には、氷嚢や保冷剤をタオルで包み、15分程度患部を冷やす「アイシング」も炎症を鎮めるのに有効です。これらのセルフケアは、即効性を期待するものではなく、根気強く毎日続けることが大切です。痛みの原因に根本からアプローチし、症状の緩和だけでなく、再発しにくい足の状態を作ることにつながります。痛みが一向に改善しない、または悪化する場合には、自己判断で無理をせず、必ず整形外科などの専門医を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
専門家が教えるかかとの痛みを和らげる知恵