頻尿の中でも特に生活の質(QOL)を著しく低下させるのが「夜間頻尿」です。夜間頻尿とはその名の通り「夜間、排尿のために1回以上起きなければならない」状態を指し、これが「2回以上」になると睡眠が深刻に妨げられ、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下といった様々な問題を引き起こすため、治療の対象として積極的に考えるべきとされています。夜間頻尿は加齢と共に増加する傾向にあり、高齢者の転倒・骨折の大きなリスク因子ともなっています。夜間頻尿の原因は一つではありません。主に四つのタイプに分類されます。①夜間多尿: 夜間に作られる尿の量が異常に多い状態です。通常睡眠中は尿の産生を抑える「抗利尿ホルモン」が分泌されますが、加齢と共にこのホルモンの分泌が低下すると夜間の尿量が増えてしまいます。また高血圧や心不全、睡眠時無呼吸症候群といった病気も夜間多尿の原因となります。②膀胱蓄尿障害: 膀胱に尿を十分に溜めておけなくなる状態です。代表的なのが「過活動膀胱」で夜間でも少量の尿で強い尿意を感じて目が覚めてしまいます。男性の「前立腺肥大症」も膀胱を刺激し蓄尿障害を引き起こします。③睡眠障害: 何らかの原因で眠りが浅く夜中に何度も目が覚めてしまう「睡眠障害」が根本にあるケースです。目が覚めたついでに「念のためトイレに行っておこう」という行動が習慣化し夜間頻尿として認識されている場合があります。④水分・塩分の過剰摂取: 特に夕食後から就寝前にかけて水分やアルコール、あるいは塩分の多い食事を摂りすぎる習慣が直接的な原因となっていることも少なくありません。夜間頻尿の治療はまずこれらのどのタイプが主な原因であるかを見極めることから始まります。そのためには「排尿日誌」を記録し、いつどれくらいの水分を摂り、いつどれくらいの尿が出たかを客観的に把握することが非常に重要です。