風邪をひくと、多くの人が、喉の痛みや、鼻水、咳、そして発熱といった、典型的な症状を経験します。しかし、中には、「熱はないのに、なんだか皮膚の表面がピリピリする」「服が擦れるだけで、肌がヒリヒリと痛い」といった、一見すると風邪とは、直接関係なさそうな、皮膚の痛みを訴える人がいます。この、風邪に伴う、不思議な皮膚の痛みは、一体、何が原因なのでしょうか。その背景には、ウイルスと戦う、私たちの体の、複雑な「免疫反応」が、深く関わっています。風邪のウイルスが体内に侵入すると、免疫システムは、ウイルスを撃退するために、「サイトカイン」と呼ばれる、様々な情報伝達物質を放出します。このサイトカインは、白血球などの免疫細胞を、感染の現場に呼び寄せたり、体温を上げて、ウイルスの増殖を抑えたり(発熱)といった、重要な役割を果たします。しかし、このサイトカインの一部(特に、インターフェロンなど)が、同時に、私たちの「神経」を、過敏にさせてしまうことがあるのです。これにより、普段は何とも感じないような、衣服の摩擦や、軽い接触といった、ごくわずかな刺激でも、脳がそれを「痛み」として、認識してしまうことがあります。これが、風邪の時に、皮膚がピリピリ、ヒリヒリと感じる、主なメカニズムの一つ、「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる状態です。また、高熱が出ている場合は、それ自体が、皮膚の知覚過敏を引き起こすこともあります。さらに、風邪の原因となっているウイルスが、インフルエンザウイルスのように、全身症状を引き起こすタイプのものであれば、筋肉痛や関節痛と同様に、神経痛として、皮膚に痛みが現れることもあります。ほとんどの場合、この皮膚の痛みは、風邪の回復と共に、自然に消えていきますが、中には、帯状疱疹などの、別の病気が隠れている可能性も、ゼロではありません。
風邪で皮膚が痛い、その意外な原因とは