かかとの痛みに悩む人にとって、靴は単なるファッションアイテムではなく、症状を緩和し、悪化を防ぐための重要な治療器具とも言えます。毎日履くものだからこそ、その選択が足の健康に与える影響は計り知れません。間違った靴選びは、無意識のうちにかかとへ過剰な負担をかけ続け、痛みを長引かせる最大の原因の一つとなり得ます。では、どのような靴を選べば良いのでしょうか。まず最も重視すべき点は、かかと周りをしっかりと固定できる、硬くて丈夫なヒールカウンターを備えていることです。かかとが靴の中で左右にぶれたり、浮いたりすると、歩行が不安定になり、足底腱膜に余計なねじれのストレスがかかります。次に、土踏まずのアーチを適切にサポートしてくれる構造であることも重要です。扁平足気味の人は内側のアーチを、逆にハイアーチの人は中央から外側のアーチを支えるような設計の靴やインソールを選ぶことで、足底にかかる圧力を分散させることができます。また、靴底にはある程度の厚みとクッション性が必要です。特にアスファルトのような硬い地面を歩くことが多い場合、衝撃吸収性の高い素材が使われているスニーカーなどが適しています。ただし、単に柔らかすぎるだけの靴は、かえって足元が不安定になるため避けるべきです。つま先部分が少し反り上がっている「トゥスプリング」のある靴は、歩行時の足の蹴り出しをスムーズにし、足底腱膜への負担を軽減する効果が期待できます。サイズ選びも極めて重要で、大きすぎる靴は靴の中で足が動いてしまい、逆効果です。自分の足に合った適切なサイズの靴を選び、靴紐をしっかりと締めて履くことが基本です。これらの条件を満たす靴が見つからない場合や、より高い効果を求める場合には、市販の機能性インソール(足底装具)や、専門家が足の形に合わせて作成するオーダーメイドインソールの活用が非常に有効です。インソールは、足のアーチを理想的な形に補正し、かかとへの衝撃を和らげ、足裏全体の圧力バランスを整えることで、痛みの根本的な原因にアプローチすることができます。
かかとを守るための正しい靴選びとインソールの力